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(本文)

レーモン・ルーセルロクス・ソルス」、読了。

カントレル博士の発明品が溢れる、ラテン語で「人里離れた場所」を意味するロクス・ソルスという名の別荘。
そこには、呼吸の出来る水(アカ・ミカンス)に満たされた、大きなダイヤモンドの形をした水槽がいくつもあり、中にはそれぞれ女性や脳みそ、猫などが入っている。
女性は、髪を自由に動かして、髪からハープのような音楽を奏でている。
また、芸術作品としての、動く絵もある。
そこには、心から祈る女性を目にして、一瞬、自分の無神論を疑うヴォルテールの姿も作品になっている。
そして、カントレル博士は精神病の治療にも勤しむ。
盗賊によって自分の愛娘を虐殺された男は狂人になり、自らの仕掛けでロジャー・ド・カヴァリーというダンスを踊る人形を作り、ある歌手の声が自分の娘の声に似ていることから「娘は生きていた!」と狂喜乱舞する。
その他にも、鶏を、咳をすると少しだけ血を吐くように教育し、その血の飛ばし方で任意のアルファベットを書けるようになり、占いに使うという占い師がいたり。

・・・などなど、話が盛りだくさん過ぎて、ここに書くのが追い付かないぐらいの作品です。
ちなみに、表紙にある「気球の付いた撞槌」は、10日後までの天気を正確に測ることが出来る発明品。

この本は簡単に言うと、SFという言葉が出来る前のSFの走りのようなものです。
ただ、私は最後の訳者あとがきを読んで思ったのですが、どうも著者は言葉の使い方にものすごく拘っているらしく、原文で読んでいたらもっと面白かった可能性があります。
この本が出版されたのは1914年ですが、後にアンドレ・ブルトンシュルレアリスム宣言をするのは1924年のこと。
そのブルトンがこの本を熱讃したと言いますが、もし日本語訳で書かれたフラットな話の内容だったらそこまで熱讃していなかったかもしれません。
ちなみに、ブルトンロクス・ソルスの演劇版を見て、「いんちき野郎!」などの言葉で罵っており、初演されたその会場は支持者の客との間で騒然とした揉め事となり、警察まで呼ばれて逮捕されています。
しかし、演劇版は原作とかなり違っていて、コメディ風になっていたり、登場人物が違ったりしており、ルーセルとしては「源の発想が同じならばそれでいい」とのことだったそうですが、それで原作を愛するブルトンが怒ったのだと思います。
ブルトンの気持ちは分かる気がします。

ちなみに、今これを書いている最中に知ったのですが、押井守イノセンスという映画にロクスソルス社というのが登場するそうで、たぶんここから着想を得ているのだと思います。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AD%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%82%B9-%E5%B9%B3%E5%87%A1%E7%A4%BE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC-%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%B3-%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%AB/dp/4582765114