月に憑かれたピエロ、18章「 月に磨く」

(Facebook投稿記事)

 

昨日はハンターズムーンが見られました。
ハンターズムーンとは、ハーベストムーンの次に出る満月のことで、その年によって10月だったり11月だったりするそうです。

 

さて、私はアルベール・ジロー「月に憑かれたピエロ」のうちシェーンベルクが作曲に使用した21の詩は、全て翻訳したことがあります。
しかしながら、今回は18章「月に磨く」を翻訳し直しました。
昔の私のフランス語レベルだと、今読んだら結構間違っていたので、自分の中では訂正という形になりました。


ちなみに、この18章で分かる通り、「月に憑かれたピエロ」に出てくるピエロの名はウィレットです。
そして、原文を見ても分かる通り、この詩は同じ言葉が繰り返されております。
それはロンデルという方式であり、ベルギー人である作者はフランス詩の伝統様式を踏襲しているようです。

(本文)

18章「月に磨く」
とても淡い月の光線は
黒が棲む彼の背の上に、
ピエロのウィレットは夕方出る
良き幸運へと歩むために。
しかしそのトイレは彼を悩ませる:
彼は自分自身を調べ、ついに見る
とても淡い月の光線は
黒が棲む彼の背の上に。

それは漆喰のしみを想像させる、
そして望みもなしに朝まで、
小道の上で磨く、
その心臓は恨みに膨れる、
とても淡い月の光線。

(原文)
18.Brosseur de Lune
Un très pâle rayon de Lune
Sur le dos de son habit noir,
Pierrot-Willette sort le soir
Pour aller en bonne fortune.

Mais sa toilette l'importune :
Il s'inspecte et finit par voir
Un très pâle rayon de Lune
Sur le dos de son habit noir.

Il s'imagine que c'est une
Tache de plâtre, et sans espoir
Jusqu'au matin, sur le trottoir
Frotte, le cœur gros de rancune,
Un très pâle rayon de Lune.

(引用、終わり)

原文を見てみると、韻を「ュヌ(une)」と「ワール(oir)」で踏んでいるのが分かります。

また、3段落目の2行目にあるplâtreが、「貼り付けた」なのか「漆喰」なのかで迷いましたが、deという前置詞が直前に来ているため「漆喰」の方を取りました。
意味的には「黒い背中に貼り付いた、白い月の光が、漆喰のしみを想像させる」ということでしょうから。
つまり、内容としては、
「ピエロのウィレットがトイレに行ったら、黒い背中に白い月光が当たっていることに気付いた。それが漆喰のしみにも似ていたので、服に着いたその白を、彼は小道の上で朝までこすり続ける」
ということで意味が一筋通ります。
そこは翻訳には書ききれなかったので、原文を読まないとニュアンスが掴めないと思われます。