ダン・トーレ「食虫植物の文化誌」、読了。

(Facebook投稿記事)


ダン・トーレ「食虫植物の文化誌」、読了。


原書房の「花と木の図書館」というシリーズの一つです。

原本は、Reaktion Books社のBotanicalシリーズの一作だそうです。


食虫植物は、現時点では700種類以上発見されています。

ここでは主に、ハエトリグサ、ウツボカズラモウセンゴケ、サラセニア、ムシトリスミレについて述べられています。

ただ、最初の方には食虫植物の種類について大まかな説明があります。


ウツボカズラは、捕虫壺にある棘から甘い匂いで虫を誘い込み、壺の中の消化液で虫を消化する植物です。

この消化液は一種の湿潤剤が含まれていて、虫が溺れるのを早める効果があります。

また、種によっては消化液にキチナーゼという成分が含まれていて、虫の硬い外甲骨を溶かす役割を持っているものもあります。

場合によっては小さなネズミを捕食するものもあります。

ウツボカズラによっては、コウモリと共生関係にあるものもあり、捕虫壺がコウモリの隠れ家になっている反面、コウモリが壺の中で糞をすれば、植物にとってはより消化しやすい栄養を得ることが出来ます。

なお、芸術作品では絵画に始め、Dan CorsonNepenthes」というモニュメントなどがあります。


ハエトリグサは、捕虫葉に棘を持っており、その棘に2回触れると閉じる仕組みになっています。

なぜなら、細胞組織の興奮時に出る活動電位が生じるからだそうで、1回棘に触れても20秒経つと忘れる仕組みになっているそうです。

理由は、虫以外のものが触れた際に、間違って葉を閉じないようにするためです。

葉を閉じることは、植物にとっては結構なエネルギーを消費するのです。

芸術作品では絵画に加えて、Paul Hillnatural embrace」、「southern hospitality」のようなモニュメントもあります。


しかし、これら二大人気食虫植物は飼育するのが難しく、日が差している条件で、土は湿潤でなければならなかったりします。

そのため、多くの飼育者たちはハエトリグサの鉢の下に水を溜めています。

しかし、その水も水道水やミネラルウォーターを使うとミネラルが含まれているため、枯らしてしまう恐れがあるのです。

結局、一番育てやすいのは、アフリカナガバナモウセンゴケだそうです。

二番目に育てやすいのは、サスマタモウセンゴケだそうです。


映画や小説の作品では、フィクションとして食虫植物が登場します。

リトルショップ・オブ・ホラーズがその一つであり、人の言葉を話せるハエトリグサ的な植物を飼っている主人公は、ある日、鉄道で轢死した人の死体を食べさせたら、どんどん植物が大きくなってしまい、最後は主人公が食べられてしまうという話です。

これを子供向けにしたのがリトルショップというドラマで、残酷な描写は一切省き、植物もハンバーガーを食べるという可愛い感じに描かれています。


なお、食虫植物の歴史についても書かれていました。

淡い朱色のウツボカズラは、1880年頃に発見者である女性画家が絵に残したため、その画家であるマリアンヌ・ノースという名前から取って、ネペンテス・ノースィアナという学名が付けられました。


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