土屋健「古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 下巻」読了。

(Facebook投稿記事)

 

土屋健「古第三紀・新第三紀・第四紀の生物 下巻」読了。

技術評論社「生物ミステリープロ」の第10巻目であり、これにてシリーズ全巻を読破致しました。

ちなみに、古第三紀以降をまとめて「新生代」と言います。

 

この本は下巻であり、新第三紀(2300万年前~)と第四紀(258万年前~)の生物について書かれています。

アフリカとヨーロッパが接近し、デボン紀末に完成したテチス海はこの新生代にて終焉を迎え、その名残りが現在の地中海、黒海カスピ海アラル海などです。

プレートの運動がこのまま続いていけば、これらの海もやがて完全に消えるだろうと言われています。

 

まず、新第三紀について。

そこには、飛べない巨大な鳥である恐鳥類がいます。

前の巻で紹介されていたガストルニスもそうですが、そのガストルニスは古第三紀にて絶滅したとされており、その後釜としてララワヴィスなどのフォルスラコス類が登場します。

 

また、骨質歯鳥類という「飛べる鳥」もいて、嘴がノコギリ状のカモメのようなオステオドントルニスもいます。

翼開帳は6mと、最大級の鳥類です。

化石を見てみると、歯が生えているのではなくて、嘴がノコギリ状になっている模様であり、歯のように抜けることはありませんでした。

ちなみに、このオステオドントルニスは三重県津市美里町からも化石が発見されております。

 

サメ類では、体長4.8~6.4mという巨大な身体を持つメガロドンが出て来ます。

 

動物では、古第三紀のプロドレモテリウムが新第三紀にてカンスメリックスに進化し、そこから首が長くなっていったサモテリウムというキリンの祖先と、首が短くなっていったシバテリウムというオカピの祖先とに分かれます。

そう、キリンとオカピは同一の祖先を持つのです。

ちなみに、サモテリウムの首はキリンほど長くはなく、長くなる途中の進化形態となっております。

 

次に、第四紀について。

 

有袋類が発展します。

プロコプトドンというカンガルーの仲間は、身長3mあり、跳躍することは出来ません。

しかし、実際に遭遇したら怖いだろうなと思います。

その他にも、この新生代は意外と遭遇したら怖いだろう動物が沢山います。

その中で人類が生き延びていたのだから、それはすごいことだと感じます。

 

メガロケロスという鹿の仲間は、角がとても大きいのが特徴です。

ラスコーの壁画にもメガロケラスが描かれております。

 

おっと、忘れておりました。

ゾウ類であるナウマンゾウやケナガマンモスが登場します。

寒冷な気候に強く草原を好むケナガマンモスと、温暖な気候を好み針広混交林で暮らしていたナウマンゾウ

大抵はケナガマンモスがいなくなるとナウマンゾウがやって来るといった具合に、棲み分けられていたとされております。

しかし、同時期に化石が発見されていたりすることもあって、この二つが同じ場所に共存していたのかどうかで議論がなされております。

 

さて、ここからが本番。

私が一番話したい醍醐味がここにあります。

 

それは、人類が登場したのです!

一応、初期霊長類で体長7cmのアーキセブスという種がいましたが、これはメガネザルの方向へと進化して行き、ヒト科とは関係のない種となりました。

 

話は一瞬だけ新第三紀に戻りますが、最古の人類であるサヘラントロプス・チャデンシスは720万~600万年前に登場し、アフリカ中央部のチャドで発見された化石となります。

そして、最も多くの情報を持っている化石がアルディピテクス・ラミダス、通称アルディという人類化石であり、身長1.2m、体重50kgの女性であるとされています。

そして、370万~300万年前には、タンザニアエチオピアケニアなどからアウストラロピテクス・アファレンシスというヒト科の化石が発掘されます。

現在、コーヒーで有名なそれらの産地は、アウストラロピテクスの産地でもあったのです。

アウストラロピテクス・アファレンシスの中でも通称「ルーシー」というその化石は、身長1mほど、体重30kg弱です。

しかし、それは小柄な方であり、種としては身長1.5m、体重40kg超のものもあります。

姿かたちは直立した類人猿といった印象で、その体格は現在の人類よりもチンパンジーに近いとされています。

 

それから230万年前までにはヒト科のホモ属が誕生しています。

最古のホモ属はホモ・ハビリスです。

そして、次に出て来る、遥かに現生人類の形に近いとされる最古の化石がホモ・エレクトゥスです。

その後、ホモ属には多くの種が出現し、栄枯盛衰を繰り広げます。

代表的なホモ属はホモ・ネアンデルターレンシス、つまり、「ネアンデルタール人」です。

 

まとめると、人類の祖先は720万~600万年前に誕生し、サヘラントロプス→アルディピテクス→アウストラロピテクスホモ・ハビリスホモ・エレクトゥス→ホモ・ネアンデルターレンシスという順に進化して行きます。

このように、直立二足歩行の人類の祖先は、(前巻で紹介した)サーベルタイガーのスミロドンや、巨大鮫のメガロドン、恐鳥類のララワヴィス、歯がノコギリ状になった鳥、マンモス、ナウマンゾウなど、そういった動物たちと共存していたのです。

 

ちなみに、第四紀のオーストラリアにて大量絶滅が発生しており、中でも体重44kg以上の大型哺乳類は88%が絶滅しました。 その大量絶滅の原因は分かっておらず、気候変動による説と、人類が大量に殺戮した説とに分かれるそうです。

人類がオーストラリアにいつ来たか?

それによって説が分かれているため、そこが話題の焦点となっているそうです。

 

これにて、古生物シリーズの本、全巻コンプリート!

ああ、長かった。

いや、長いようで短かった。

なぜなら、読んでいてとても楽しかったから。

私は合計で3万円ほどを投資したことなります。

著者の土屋健さん、挿絵のえるしまさくさん、他にも写真など、この本の制作に関わっていた方々、本当にありがとうございました。 https://www.amazon.co.jp/%E5%8F%A4%E7%AC%AC%E4%B8%89%E7%B4%80%E3%83%BB%E6%96%B0%E7%AC%AC%E4%B8%89%E7%B4%80%E3%83%BB%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E7%B4%80%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9-%E4%B8%8B%E5%B7%BB-%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC-%E3%83%97%E3%83%AD/dp/4774182532?fbclid=IwAR19a3edsX0Fuyd10fFb_FCANkg7A0huxdOwsY0TK-b2E1gVrG76X1ponjE