竹内清秀「風の気象学」、読了。

(Facebook投稿記事)

 

竹内清秀「風の気象学」、読了。
東京大学出版会の本は今回初の読了となります。

 

なお、この本は廃版のため、数年前に神保町の明倫館書店にて6000円ほどで購入したものです。
数式で物事を表現する専門書なので需要がなく、せっかく濃い内容なのにも拘らず、この類の本はすぐに廃版となる傾向があります。

 

ただ、内容ですが、これは他人に言っても分かりにくいと思います。
気象学専門家が言うには、難易度は中級レベルだそうです。
ただし、私は少し前に近藤純正「水環境の気象学」を読み通したことにより、理系の頭が育って来たことが大きく、今回の本はその積み重ね・延長上にてすらすら読めるようになったので、ようやく面白さを体感することが出来た感じです。

 

さて、無次元の式というのは、分数になっていることが多いです。
その際、その式が「何で割ってあるか」と見ると、それに反比例することが分かります。
同様に、その式が「何が分子に来ているか」を見ると、それに比例することが分かります。
この単純な考えは、読み進めているうちはずっと使います。

 

例えば、無次元長さである「モニン・オブコフ長」は、
【分子】
・摩擦速度の3乗
・平均気温
【分母】
・カルマン定数(だいたいは0.4で固定)
・重力の加速度
・温度フラックス(これは、鉛直顕熱フラックスを、空気の体積熱容量で割ったもの)
となっております。
そして、計測する場所の「高さz」を、この「モニン・オブコフ長L」で割ったもの、すなわちz/Lこそが大気の安定度となるわけです。
大気の安定度というのは、風や温度がそのままの状態でありやすいということです。
このz/Lの値が1に近づくほど大気安定度が高く、マイナスだと大気が不安定となります。

 

最後に、簡単な内容のページを写真にして載せたので、それについての軽い説明をします。

 

写真1枚目(p.65)は、ビル付近にやや強い風が吹いた時の、風の流れになります。

 

写真2枚目(p.153)は、風によって樹木がどのように変形するかを表わす「グリグス・プトナムの指標」です。
0〜Ⅷの数字が大きくなるとともに、風は強くなります。
そして、
0.91×(0〜Ⅷのどれか)+2.6=風速(メートル毎秒)
となります。
なお、この数式と実際の風速との誤差は18%ほどだそうです。

 

写真3枚目(p.99)は、レイノルズ数が上がるにつれて風の動きがどのようになっていくかというものです。
レイノルズ数とは、粘性に反比例します。
つまり、レイノルズ数が高いほど流体はサラサラであり、低いほどネバネバです。
また、(c)には流れの先にカルマンの渦列が横二列に生まれてくるのが分かります。(写真では渦が4つありますが、大事なのは二列ということであり、4つ描かれているのはたまたまです。)

 

写真4枚目(p.86)は煙の形についてです。
左の簡単なグラフにある実線部分が、高度が上がるにつれての気温の分布を表わしています。

 

写真5枚目(p.66)は、上の図は障害物のあるときの風の流れについてであり、下の図は防風林があるときの風速の減り具合についてです。
林に近ければ近いほど、風速の減り具合が大きいです。
ただし、横がマイナス方向に行くと、防風林の高さが低くなることを表わしているので、あまり風速は減らない模様です。

 

https://www.amazon.co.jp/風の気象学-気象の教室-竹内-清秀/dp/4130647040