椎名林檎「カリソメ乙女」を意訳した

椎名林檎「カリソメ乙女」を意訳した。

この人、浄瑠璃故事成語など、日本の古典文学に詳しくて、今まで散々聴いてきたのに気づかなかった。

歌詞が深い。

 

(以下、私のFacebookより引用)

 

椎名林檎「カリソメ乙女」について。

椎名林檎さんは意外と日本の古典文学に詳しく、特に故事成語をよくご存じだと思います。
歌詞については、特に後半が切ないです。
遊廓の娼婦が「所詮、男心は移ろいやすいものよ」と言っておきながら、自分自身もその男を好きになってしまった、という話。
なお、歌詞中の「天下八つ過ぎ」の元ネタは浄瑠璃の「天下は夜中八つ過ぎ、廓は恋の昼中や」という台詞だと思います。
(しかし、そのコトバンクに書いてある「淀鯉」という浄瑠璃はどの作品を言っているのかいまいちわかりませんでした。)

 

(歌詞)

「カリソメ乙女」

天下八つ過ぎ 浮世男よ
良いひとだけど 幕の切り時
毎日を割く 仮初め枕
好いて好かれた 男が哀しい
女は誠の誓いなんて要らないよ
大概が芝居さ
惚れた腫れた、目眩めいた
噫!秋ノ空

六日の菖蒲 仮初め心
喰って喰わされ 男は哀しい
女は嘘を吐いたっていいじゃないか
相応の茶番で粧し込んで居なくちゃ
きっともう狂ってるって
いけない男、色男
わっち悪くないわいな
切っても切っても切れぬ
噫!幕ノ内

七つ下がり
”本当は添いたいよ”と、云って
帰らないで頂戴
淋しいじゃないの
待って一寸待って
本性でありんす
ねえ利き男、冗談よ
左様なら

 

(意訳)

「仮初めの乙女」

今は午前2時、あらゆるものが古くなって色が褪せるとき
辛く儚い世の男よ、
良い人だけど、この人との関係を終わらせるのにいい時ね
毎日、私のいる風俗に通ってくるけれど、
自分を好きになってくれたこの男は悲しいものね
女は誠実な誓いなんて要らないよ
大概が演技をしているだけよ
惚れたり、愛したり、
ああ、男心は秋の空のように変わりやすいものなのよ!

時期を過ぎて役に立たなくなった、移ろいやすい心よ
セックスを求めて、やらされて、可哀そうな男
女は嘘を吐いたっていいじゃないか
その時々に相応しい演技を続けていなくては、
もう狂っているはずよ
魅力的な男はいけないわ
私は悪くないわよ
切っても切っても切れない縁
ああ、いつになったらこの関係は幕を閉じるの!

午後4時過ぎ
「本当は一緒にいたいよ」と言って欲しい
お願い、帰らないで
淋しいじゃないの
待って、ちょっと待って、
これが本性です
ねえ、気の利いた粋な男、冗談よ
さようなら