(Facebook投稿記事)
師匠の家で、映画「シラノ・ド・ベルジュラック」を見ました。
こんな面白い映画は人生で初めて出会いました。
なお、この話はパスカル・キニャールが作品中に引用していました。
簡単にネタバレすると、傍若無人だった男が、ある若い男に自分を投影し、他人の恋を応援することに人生を賭けてしまう話です。
原作は、17世紀に実在したシラノ・ド・ベルジュラックという人物を元に、19世紀の作家が戯曲として創作したものです。
傍若無人で喧嘩っ早い、貴族で軍人のシラノは、ある日、ロクセーヌという貴族の女性に恋をします。
しかし、彼には深い自己嫌悪がありました。
鼻がとても大きいのです。
その自己嫌悪のせいか、詩や小説、劇に自分を逃避させ、また、剣術の腕前も恐ろしく強かったのです。
シラノの口からは、詩的な言葉がすらすらと流れ出て来ます。
しかし、ロクセーヌはクリスチャンという名の若い男に恋心を抱いていました。
そして、シラノはその事を彼女から聞き、落胆します。
その時、クリスチャンがシラノの軍隊に入隊して来たのです。
そして、クリスチャンもロクセーヌのことが好きでした。
二人は敵視し合うかと思いきや、なんとシラノはクリスチャンの恋を自分に投影させて応援するのです。
クリスチャンには弱点があり、無学でした。
なので、なんとシラノがクリスチャンの代わりに詩的なラブレターを書き、それをクリスチャン自身が書いたことにしてしまうのでした。
そう、あの傍若無人だったシラノが、他人の幸せを応援することに目覚めてしまうのです。
しかし、なんとロクセーヌは、最初はクリスチャンの見た目が好きだったにも拘らず、今度はクリスチャンを装ってシラノが書いた詩的な恋文に恋をしてしまうのです。
そんなわけなので、これはシラノの不器用で優しさ溢れる生き方に心を打たれる作品です。
フランスでは今でも絶大な人気を誇っている作品だそうです。
結局、クリスチャンは戦死してしまいます。
未亡人となったロクセーヌは、14年後、シラノと再会します。
しかし、シラノは敵対勢力に嵌められて、頭上に建設現場で使う柱を落とされ、頭から血を流していることをバンダナで隠している状態で、ロクセーヌと再会していたのです。
ロクセーヌは胸ポケットに大事にしまってある一通の手紙を見せます。
それは、クリスチャンが戦死する直前に送った手紙でした。
それを読み始めたシラノは、途中から暗唱し始めます。
それで、クリスチャンが送ったとされる全ての手紙は、実はシラノが書いたものであることをロクセーヌに悟られ、彼女はシラノを問い詰めます。
この瞬間、ロクセーヌはシラノを愛していました。
しかし、頭から流血しているシラノの身体は、もはや限界でした。
シラノは最期、歴史上の人物や、見えないものに対して話しかけ、オパールのような満月の下、息を引き取ります。
「私は母親から嫌われて育ち、女の愛情というものを知らずに生きてきた。しかし、一人だけ愛情をかけてくれた女性がいた。」
なお、シラノの台詞は物凄く詩的で美しく、かつ饒舌なのですが、ごめんなさい、私はさすがにその台詞の一語一句までは覚えていませんでした。
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