いつも難解なキニャールにしては読みやすい作品なので、電車の中で読めてしまう。
これを読んでいると、「自分は今、瀟洒(しょうしゃ)なフランス文学に浸っているんだな」という感じがすごくする。
私は現在107ページまで読んだので、あと半分弱残っている。
西暦800年のシャルルマーニュ戴冠(カール戴冠)から42年後、842年に「ストラスブールの誓い」というのを行った。
その時、誓いの式において、歴史上初めてドイツ語とフランス語が話された。(それまではラテン語だった。)
その歴史を、この「涙」という作品では取り扱っている。(p.99 アルゲンタリアの秘跡)
(引用)
その時、八四二年二月十四日の午前の終わり、冷気の中で、奇妙な霧が人々の口に入った。
人はそれをフランス語と呼ぶ。
ニタールは誰より先にフランス語を書いた。
今日わたしたちが「ストラスブールの誓い」という言葉で示すものは、司教や神父たちがラテン語で「アルゲンタリアの秘跡」と呼んだものである。
ニタール自身が『歴史(イストリア)』の中で、イル川のほとりにあったアルゲンタリアの町を「今ではほとんどの住民がストラスブールと呼んでいる nunc Strazburg vulgo dicitur」と明記している。
(引用、終わり)