詩集「月に憑かれたピエロ」、第1章「劇場」

(Facebook投稿記事)

 

ベルギーの詩人アルベール・ジローの詩集「月に憑かれたピエロ」の、第1章「劇場」を翻訳しました。
この詩はシェーンベルクによって作曲されたものではありません。
詩集「月に憑かれたピエロ」は、作曲に使われなかった詩も半数以上あるのです。

 

なお、「反り返る(se cambre)」を「威張り返る」と訳したのは私の恣意的解釈です。
「反り返るコロンビーナのために」だと意味不明ですからね。

 

 

(本文)

 

「劇場(THÉATRE)」

 

私は室内の劇場を夢見ている、
そこにはブリューゲルが描くだろう鎧戸たちや、
シェイクスピア、青ざめた城たち、
そしてヴァトーの描く、琥珀色の背景画たちがある。

 

12月の晩の寒さによって、
私の紫色の指を温める、
私は室内の劇場を夢見ている、
そこにはブリューゲルが描くだろう鎧戸たちが。

 

生姜によって興奮させられれば
見ることになるだろう、醜いクリスピヌス(※1)の兄弟が
威張り返るコロンビーナ(※2)のために、
彼らの痩せ細った脹脛に綿を詰めるのを。
私は室内の劇場を夢見ている。

 

※1
実在した靴職人の殉教者たちで、後に聖人とされるカトリック教徒の二人兄弟。

 

※2
オペラ「道化師」中にてピエロの妻とされる架空の人物で、ぼろのドレスを身に纏っている。

 

Pierrot lunaire - Wikisource