ピアノの練習について

(Facebook投稿記事)

 

ピアノの練習について。

 

「曲を覚えるために普通のテンポで適当に弾いて、記憶した譜面が脳内から消えないようにする」というのは、いわゆる雑な弾き方というやつで、やっていてワクワクしません。

そういう練習は、大きな達成感がありません。

その時点で、ピアノを練習するのはあまり好きではないと思い込んでしまうこともあります。

ところが、「自分の中の美意識が求める方向に、ゆっくり丁寧に練習する」と、ワクワク感が出て来たりするのです。

その練習は、形而上の快楽をもたらし、とても幸せな時間になるのです。

もちろん、いずれそれが普通のテンポで弾けるようになることを想定して、今は敢えてゆっくり丁寧に練習するのです。

直感の動く方へ行動すること。

そして、もしも私とは逆のパターンで、雑に速く弾きたい人がいるならば、いずれそこから丁寧に弾けるようになることを想定して、今は雑に弾けば良いのです。

 

私は今、ラヴェルの夜蛾(鏡:第1曲目)と、リゲティの虹(ピアノエチュード5番)を練習しています。

この練習が続くかどうかは分かりませんが、もし途中で練習をやめたとしても、CDなどでその曲を聴いた際に見えてくる世界が変わるのは確かでしょう。

もしかしたらそれが派生して、他の楽曲に対しても見えてくる世界が変わり、芸術全般に対する意識も少しずつ変わって行くのかもしれません。

 

もちろん、時々で良いので、日比谷のベヒシュタインセントラム東京にある練習室や、御成門のカフェベヒシュタインに出向いて、練習の場に課金することも大事でしょう。

ベヒシュタインなどのドイツ製ピアノで練習すると、タッチなどによる表現可能な幅が断然大きいため、自分の演奏の拙さが全て露わになり、次元の違う意味で鍛えられます。

それは、本を購入するのと同じで、投資したそのお金はいずれ違う形で返ってくると思っています。

 

ちなみに、私の好きな演奏は、ラヴェルの鏡は児玉桃さん、リゲティのピアノエチュードはToros Canさんのものが好きです。

どちらもSpotifyに落ちています。

なお、児玉桃さんの演奏は、ラヴェル自身が言っていた「演奏者は作曲家の指示通り動け」という意図を無視した、いわゆる邪道の部類に属します。

しかし、私の感じるままを言うならば、彼女は作曲家の意図を超越したのであり、曲そのものの潜在的な良さを引き出した演奏に思えてならないのです。

 

https://open.spotify.com/track/1Q52DpYjMC0tsrqETm2HDM?si=iE2nI0qZRjKLGUs-6GaNlw

 

https://open.spotify.com/track/1bJo0PRgfgycmEbM3gk6eU?si=v2HYM5zNQL-eWckIIKtgmA