前に、例の横浜の喫茶店店員の話をしたと思うが。

元々嫌な奴だったその女が、今ではいつも細やかな気を遣ってくれる。

私がいつも通りにブレンドを注文すると、私は右手でパイプタバコを吸っているため、その人はいつも最初からコップの取っ手を左向きにしてくれて、ミルクなしで置いてくれる。

そのことに、つい最近気付いた。

そういえば、他の店員さんの時はいちいちミルクなしか確認するのに、この店員さんの時だけは黙っていても「取っ手が左向き」で「ミルクなし」だよなと。

嫌な奴って、自分が好きになった相手以外にはそういうことをしないんだよな。

なので、ふと思い出して、感謝の気持ちがこみ上げて来た。

そういう人がいるんだったら、生きてみようかなって。

ただ、申し訳ないが、嫌なことをする人間は脳が他人を害する快楽を覚えているため、結婚後に多方面からそのツケが回ってくるので、後先考えたら恋愛対象には出来ない。

このまま密かに、お互いに側から覗いて見ている程度の仲であって欲しい。

向こうも多分、そう思っているだろうし。

 

そのため、仕事終わりに例のあの子(お弟子さん)をその喫茶店に連れて行くのは、やめておいた方が良いだろうな。

もしもその女から好かれているっていうのが私一人の妄想であるなら、あの子を連れて行っても良いということになる。

しかし、それはやめておくよ。

ちなみに、前にそこではない横浜の別の喫茶店にあの子を連れて行ったら、私の全く知らない店員さんがものすごい悲しそうな顔をしていて、今でもその悲しそうな雰囲気は続いている。

 

「モテる男は辛い」っていう言葉があるけど、あれは逆の意味であって、辛いことに耐えた男がモテるんだよ。

男から見た好みの女性像が人によって全然違うように、女から見ても世の中にはそういう格好良さもあるわけで。

なので、辛いことに耐えられなくなって、もっと弱い立場の人間をいじめて八つ当たりする男は、要するに女からするとキモいんだよ。

そのため、性格の悪い男(=キモい男)は、女を口説くために膨大な量のテクニックを要して、やっと一人の彼女を得ている現状。

逆に、辛い経験をした分だけ他の人に優しく出来る男は、ただでさえ色んな世界を渡り歩かなければ生きて来られなかった分、きっと遺伝子が強いんだよね。

ヤクザとかで悪いことをやって来たのに今は更生して人よりも優しくなった男が「いぶし銀」だとすれば、周りから酷い目に遭い続けてそれでも優しさや愛を捨てずに貫いて生きてきた男は「ダイヤモンド」なんだよ。

きっと、あなたは炭ではなくて、本当はダイヤモンドなんだ。