「水環境の気象学」、読了。

まじで長かった、この本。

理系書籍は長距離ランだよ。

しばらく理系本はいいや。

 

 

(以下、Facebook投稿記事)

 

近藤純正「水環境の気象学」、読了。

 

初の朝倉書店読了となります。
つまり、これは数式のガッツリ出て来る本物の理系専門書です。
しかし、その割には非理系出身者に対しても易しい説明のされた、親切な本でもあります。
例えば、数式に使われる記号が全て章ごとの始めに羅列されているのも、他の専門書にはないありがたさだと感じました。(写真1枚目)

 

大体の内容としては、「運動輸送量・顕熱輸送量・潜熱輸送量」の3つが根幹をなしている感じでした。
特に、この本では無次元単位であるバルク輸送係数が頻繁に使われており、「運動のバルク輸送係数CM・顕熱のバルク輸送係数CH・潜熱のバルク輸送係数CE」の3つがよく出て来ます。
ちなみに、普通の温度が「顕熱」だとすると、水が蒸発する際に使われる熱が「潜熱」です。
測定される潜熱量が多かった場合は、それだけ水が蒸発したと考えれば良いわけです。
そして、この本においての「運動」とは主に風の動きのことを表わしています。

 

なお、無次元単位がグラフに書かれていると、何の事だか分からないかもしれません。
しかし、例えばグラフの横軸が「顕熱の無次元単位」を表わしていたとすれば、それは素直に「顕熱の上がり・下がり具合」へとそのまま感じ取ることが出来るわけです。
まあ、私は気象学の専門家でもなければ、予報士などでもありません。
なので、無次元単位が出て来てもビビることなく、素直にそう受け取れば良いだけです。

 

ちなみに、微分積分の考え方としては、私はこう考えています。

 

微分とは、あるものを最小の大きさで割った割り算みたいなものであり、最小のもので割ることにより、「傾向」が掴めるようになるわけです。

 

積分とは、曲線によって「傾向」が書かれたグラフから、必要な分だけその曲線の下に生えている「無限小の棒グラフたち」を刈り取った合計のことだと考えています。
その際に、○から△までと「範囲を指定」して、刈り取るのです。
(ちなみに、範囲指定が∞から-∞までの範囲だった場合は、∞と-∞の所に好きな数字を入れれば刈り取ることが出来るため、まさに無限に刈り取ることがいつでも出来る状態なわけです。)

 

 

さて、索引を入れて350ページあるこの本の内容は、とてもここには書ききれないため、私の撮った写真の説明だけさせて頂きます。
そして、簡単な内容の順に写真を載せて行きます。

 

写真2枚目は、植生地における木々の密度と、その上を行く風の動きです。
真ん中の絵を見るように、木々が適当な密度の時には、空気が一番混ざるというわけです。
木々が多すぎても少なすぎても、風は上を通過してしまい、空気が混ざりにくいのです。

 

写真3枚目は、ホドグラフと言います。
曲線に書かれた数字は高度(メートル)です。
そして、このホドグラフは、風のベクトルが地衡風からどれだけずれているかを表わしています。
0の点と、書かれた数字(148など)を結び付けると、その高度での風のベクトル(向き)になるわけです。
ただ、高度が上がるにつれて、地衡風VGと一緒の線になります。
ちなみに、地衡風とは気圧傾度力コリオリ力が釣り合っている際に吹く風であり、上空に行けば行くほど風はこのようになっております。

そして、パラメータにあるZ0とは粗度のことであり、「どれだけ地面が平坦ではないか」を表わします。

さて、ホドグラフの上が低圧側、0より下が高圧側だとすると。(この図は風を横から見たもの。)

同じ100メートルぐらいの高度で見てみると、Z0が大きい方(地上に障害物が多い所)は斜め左にて遅く風が吹いているのに対し、Z0が小さい方(地上が平坦な所)はもっと速くて遠くに到達している代わりにあまり斜め左方向ではない場所に風が到達しているのが分かります。

これは、比較的上の方の風でも、地面の障害物の摩擦による影響を受けている証でもあります。

ただし、高度1096メートルにて、両者とも真っ直ぐな地衡風に変わって行くのが分かります。

 

写真4枚目は、「顕熱のバルク輸送係数CH」に「風速U」を掛けた、「交換係数CHU」が横軸になっているグラフです。
交換係数というのは、「空気塊の顕熱」が「周りの空気の顕熱」と混ざり合う時の係数のことです。
つまり、交換係数が大きいということは、空気がよく混ざるということです。
なお縦軸は、上のグラフが「地表面温度Tsから空気温度Tを引いた差」で、真ん中のグラフが「顕熱輸送量(単位は、1平方メートルの中に何ワットの熱量があるか)」であり、下のグラフが「潜熱輸送量(単位は、同じく)」となっています。
そして、パラメータに書かれたβとは「蒸発効率」のことであり、0だったら蒸発せず、1だったら全て蒸発するという意味であり、0.5だったらその間ぐらいの蒸発率となります。
例えば、上のグラフによると、βが0の時の方が、地表面温度と空気温度の差が大きいようです。(同じ交換係数のとき。)

 

↑あ、空気の混ざりと訊いても、さっきの木々の写真は忘れて下さい。
これは、植生のやつよりも前の章であり、何にもない状態での空気の混ざり具合を計算しているものなで。

 

https://www.amazon.co.jp/水環境の気象学―地表面の水収支・熱収支-近藤-純正/dp/4254161107