前にも言ったが、Mさん(古株のお弟子さん)の出身校は、アメリカ最古の音楽学校であるニューイングランド音楽院だ。

で、ここからちょっとしたシンクロニシティがあって。

 

実はリディアン・クロマティック・コンセプトという、恐らく最古のジャズ理論の本は、ニューイングランド音楽院の教授によって書かれたものなんだ。

そして、武満徹はこの本を、辞書を使いながら半年くらいかけて独学で読んだという。

つまり、武満徹の独特なジャズ和声は、ニューイングランド音楽院の校風(学校の教え方の癖)に由来するっていうことになる。

 

そして、Mさんはオルガン演奏専攻だったので、メシアンの曲はほぼ全てさらったと言っていた。

メシアンの曲は、倍音になる音階を利用している。

例えば、ドの倍音は、ドドソドミソシ♭ドレミファ♯ソラシ♭シド…

そして、メシアンの和声は、ドミソの音にファ♯を足したりする。

これは、ドの基音から見て、第11倍音であるファ♯を足したことになる。

(ここで、メシアンがもう一つ使っていた、「移調の限られた旋法」については除外する。)

 

これを知っていると、メシアンの曲を聴いているだけでも、「きっとそういう構造なんだろうな」という想像がつく。

でも、なんかこれ、武満徹の音楽にも見えてくるものがないか?

武満徹の複雑な和声も、「きっとどこかの倍音をさらっているんだろうな」っていう。

 

そう、複雑で美しい和声は、その基音の倍音である可能性もある。

倍音の音をさらっているんだ。

ただ、もちろん全部が全部そうではないかもな。

ジャズなんかでは、ドミソシ♭の(C7の)和音に、ミ♭を足して、C7(♯9)を作ったりもするから。

ミ♭は、ドの倍音にはない。

強いて言うなら、ソの第12倍音がミ♭だが、そんなことを言ったらどんな音でもどこかしらの倍音に該当してしまいそうだ。

でも、美しい。

不思議だな。

ジャズでは、ニューオーリンズ時代からドミソの上にミ♭を重ねたりしているんだよな。

黒人たちは恐らく、手探りでジャズ理論を作った部分も大きいのでは?