(Facebook投稿記事)
Marc=André Hamelin「Morton Feldman - For Bunita Marcus」のCDを購入しました。
なお、モートン・フェルドマンを知らない方のために簡単に説明するならば、「フォー・バニータ・マーカス」というこの一曲にて、70分以上もの間、ピアノの単音ばかりが鳴り続ける現代音楽です。
アクション・ペインティングなどの現代絵画に影響を受け、図形楽譜の作曲などで有名なモートン・フェルドマンですが、晩年の彼は五線譜上にて作曲しており、この「フォー・バニータ・マーカス」こそフェルドマンの生涯を賭けて出した答えであって、私の中で最高傑作だと感じています。
なお、五線譜には3/8、5/16、2/2拍子が不規則に構成され、これらの拍子のみで70分以上もの間、ピアノが単音めいた音楽を奏し続けます。
ちなみに、ホルヘ・ルイス・ボルヘス著「バベルの図書館」の無機質な物語を曲想とした作品とのことです。
私はSpotifyやYouTubeで音源を漁ってみた所、このマルカンドレ・アムランの演奏したものが最高に良いと感じました。
なぜなら、この演奏は途轍もない繊細さに加えて、フェルドマンの哲学への理解を感じ取ることが出来るのです。
特に、タッチがめちゃくちゃ繊細です。
そのため、私は無損失WAV.ファイルで嗜めるようにと、CDを買うに至ったわけです。
なので、演奏者も素晴らしいが作曲者も素晴らしいという、本当に買って良かったCDのうちの一つです。
何が凄いかというと、この単音めいた音楽にはちゃんと起承転結があるのです。
最初に出て来た旋律は、後半部分にも出て来るため伏線となります。
また、最初は不安定な和音の構成からスタートして緊張感が続いて行きますが、途中から明るい和音が出て来て、その明るい旋律は後半部分で何度も使い回されアレンジされて行きます。
更には、単音が続いて行くのかと思いきや、時々、目の覚めるような和音が登場したりします。
そのため、聴いていて飽きることがなく、むしろ聴けば聴くほどその良さを発掘出来る作品であって、この一見すると無機質な音楽性には無駄がないのです。
作曲者が「一音そのものの価値を重視して作曲した」と述べている通り、きっと、その一音を構成するのにも物凄い熟考を重ねて作られたのでしょう。
この作曲技術は実に見事だと感じます。
https://www.amazon.co.jp/Feldman-Bunita-Marcus-M/dp/B06Y3L26GC