ポール・ヴェルレーヌ「月の光」

(Facebook投稿記事)


ポール・ヴェルレーヌ「月の光」を翻訳しました。


言わずと知れたことですが、フォーレの「月の光」はこの詩を元に作曲されており、フォーレの弟子であるドビュッシーは彼のその歌曲が世に出たことを切っ掛けに「月の光」というピアノ曲を作曲し始めました。

ですから、ドビュッシーの「月の光」という曲は、元を辿ればこの詩に行き着きます。

もちろん、ドビュッシーのその曲は「ベルガマスク組曲」の3曲目に位置していることからも、この詩を想定していることは明らかです。


なお、詩中にある「選ばれた風景」とはアントワーヌ・ヴァトーの描いた数々の雅宴画(Fêtes galantes)のことであり、詩集の表題も同名の「艶なる宴 Fêtes galantes」となっていることから明らかです。



(本文)


君の魂は選ばれた風景の場にあり

そこには魅惑的な仮面を被った、ベルガモ舞踊を踊る人たちがいて、

リュートを弾き、踊りながらも、その多くは

幻想的な仮装の下に悲しみがある。


勝者の愛や巡り合わせの良い人生を

短調に乗せて歌いながらも、

彼らは自身の幸福を信じてはおらず

その歌は月の光に混ざり合う。


悲しくも美しい月の光の静けさは

木々に留まる鳥たちを夢見させ、

噴水は恍惚に啜り泣き、

柔らかく大きな噴流は大理石たちの中に。