パスカル・キニャールと物理学を結ぶものって何なんだろうと考えていたんだよ。
私はキニャールと理系書籍という、全く違うものを勉強してしまったなと常々思っていた。
そもそも、フランス文学と理系って、かけ離れ過ぎているような気がしていた。
しかし、共通の架け橋はあった。
それは、「音楽」だよ。
キニャールは元々オルガン奏者でもあり、彼の文学の根底には音楽がある。
一方で、物理学には音響学というものがあるし、また、現代音楽ではサンプリングした周波数のスペクトルを、そのまま音階にしたものだってある。
トリスタン・ミュライユとかね。
そして、哲学者レヴィナスの息子ミカエル・レヴィナスは、現代音楽の作曲家でもあるし、ミュライユを演奏するピアニストでもある。
そして、言わずと知れたことかもしれないが、キニャールはナンテール大学時代に、レヴィナスから直に哲学を教わっている。
音というのは圧力伝播だ。
そして、気象学では空気の流れが重要になる。
それは、私がもう一つ興味を持った、風力発電のことにも繋がるが。
音の圧力を伝播させる素材は、空気である。
台風が街の家々を襲うとき、天空が、ビルの隙間が、しなる木々が、風力発電機たちが、それぞれ固有の音楽を奏でている。
そして、私の両耳に入り、小さな骨を振動させる。
ちなみに、前も言った通り、キニャール、レヴィナス、ミュライユの繋がりを知ったのは偶然で、時系列的にはそれらを別々に学んだ後でのこと。
私は、不思議な何かに導かれてここまで来た。