アルベール・ジロー「幽霊(L'Apparition)」

この程度の長さ・難解さのフランス語だったら、Glosbeという単語検索サイトを使えば、約2時間で翻訳出来るようになった。
ちなみにこの詩は、アルベール・ジローの「薔薇たちの血」という詩集の中に入っている。
 
アルベール・ジローっていったら、詩集「月に憑かれたピエロ」が有名だけど、未だにジローの詩の一つも日本語訳が出ていないのが不思議というか不満。
(月に憑かれたピエロは、オットー・エーリッヒ・ハルトレーベンによるドイツ語訳だけが唯一日本語訳されている。けれども、そのドイツ語訳もフランス語原文とは要所々々がかなり違ってしまっていて、例えば「肺結核者の血の混ざった痰が」などという汚い言葉や意味不明な言葉が、「一滴の青ざめた血の雫が」みたいな分かりやすくて小綺麗な表現にすり替わってしまっているのが残念だし、日本の大学教授たちはそのことに気付いていない。)
 
 
(以下、Facebook投稿記事)
 
(拙訳)
 
アルベール・ジロー「幽霊」
 
子供たちの中の子供、魂と神の愛は、
海と薔薇たちによる、初めてのキスを生む
それは奇妙で厳粛な笑顔を見張る
無限の肉体は薔薇たちの唇の中に
 
緑色の目の子供は、広大な後悔に満ち、
苔の色の目と濡れた森は
秘宝のように曖昧に隠れる
一つの星の亡命者の遥かなる痛み。
 
彼はある日夢を見て、
それから飛び去る。それらの夢は、悲しい!未完成だ
一つの生殖不能なイメージを永遠に飼っている
 
私は見た。おお、今後私の目は、全て無益になる。
そして私は消える、モナリザを見るために死んだ
ローマのそのページと同じように。
 
 

(以上、Facebook投稿内容)

 
 
追記だが。
この詩は「全てのものに神が宿っている」という、スピリチュアルのワンネスの元ネタみたいな感覚が分からないと、最初の4行が意味不明になると思う。
神は、奇妙で厳粛な人々の笑顔を見張ると同時に、薔薇たちの花弁の中にも存在する、という意味。
恐らくだが、アルベール・ジローは、ノヴァーリスなどもそうだったような神秘主義者だったのかもしれないし、そうでなかったとしても何らかのオカルトを信仰していたものと思われる。
当時のオカルトは、キリスト教に隠れて真理を研究するというもの。
だからこそ、キリスト教キリスト教聖人に対して、時々、辛辣な表現を使うのだと思う。